〈魔境〉討伐

GM えー、というわけで。君達はひょんなことからフェルメラを救うために〈魔境〉討伐をすることになりました。
フィール 面倒だが仕方あるまい。
GM フェルメラの町の入り口は、美しい翡翠色の霧に覆われています。皆さんが〈魔境〉に侵入すると周囲は漆黒の闇に包まれ──直後、周囲の空間に亀裂が入り砕け散ります。するとそこには巨大な樹木に覆われた亜熱帯の密林が広がっています。そして、上空には〈魔境〉独特の、例の“目”がうっすらと開いています。
フィール ここが「死の密林」か。
GM いま貴方たちがいる場所が[侵入エリア]です。石造りの街並みが広がっていますが、〈魔境〉の影響か樹木やツタに覆わ、まるで古代の遺跡のような姿になっています。
アズール 研究員がとらわれている場所を探さないとな。
GM (地図を描きながら)遠くには同じように樹木に覆われた街並みが見えます。ここからざっと見える範囲を書き出すと以下のような感じになりますが、ここからでは詳しいことはわかりません。

エリアマップ.jpg


【魔境とエリア】
 〈魔境〉の内部は複雑な迷宮構造になっていますが、実際のゲームではその〈魔境〉の内部をおおまかに数個〜十数個の[エリア]に分けて表現します。
 ここではゲームマスターが〈魔境〉を6エリアに分けており、キャラクターはエリアごとに探索を行っていくことになります。

 〈魔境〉には必ず進入口である[侵入エリア]と〈魔境〉の核である〈竜鱗〉が存在する[最終エリア]が存在し、キャラクターは基本的にこの最終エリアに到達し、〈魔境〉を破壊するのが目的となります。

フィール この[侵入エリア]が現在地だな。
アズール これは、やっかいな造りだな……。
フィール 現状ではどのエリアに進んでも、次のエリアに進むには一旦[侵入エリア]に戻ってこないといけないように見えるな。……これでは効率が悪すぎる。さてどうするか。
GM 皆さん、ここで【看破】判定をお願いします。[目標値]10。
フィール (ダイスを振る)10なら余裕。
アズール おっさんが成功したなら、俺はダイスを[竜脈]と入れ替えておこう。判定は失敗するがこれで[竜脈]が充実する。
GM 一人成功したらOKです。あなたたちは、なにか視線のようなもの、気配を感じます。
フィール ──何かがいるな。
GM しかし、明確に姿が見えるわけではありません。
フィール いま気にしても仕方ない、か。なら先に進もう。
アズール しかし、やっかいな〈魔境〉だな……。
クロウ 個人的には住宅街が気になるかなあ。
パール なに言ってるのおねえちゃん。まずは王子のお父様が無事かどうか確かめなきゃ!
フィール ……大事な金ヅルだもんな、お前的には。
パール 報酬もだけど、それ以上に人脈ってやつがね(笑)。
アズール 城なら研究員が立てこもっていてもおかしくないな。
クロウ じゃあお城から行こうか。
GM では、まずは〈魔境〉の[リミット]を決めます。
フィール そう、それが一番問題だ。


【リミット】
 この世界に存在する〈魔境〉という空間は強く人類を憎んでおり、〈魔境〉の中で人類が長時間活動を行うことを許しません。
 〈魔境〉内でキャラクター達が活動できる限界時間をリミットと呼び、このリミットは〈魔境〉内部で〈竜脈使い〉が行動を行うたびに減少していきます。
 もしリミットが0になった場合、[魔境臨界]と呼ばれる恐ろしい現象が発生し、〈魔境〉の探索が非常に困難になってしまうのです。つまり、このリミットが、実質的なダンジョン探索のタイムリミットというわけです。
 このリミットの値は、キャラクターが〈魔境〉に入る際にGMがダイスを振って決定します。


GM (ダイスを振る)お、低いなー。41だ。
クロウ ちょ(笑)。
アズール す、少ねえ!
フィール ……気合いいれていくかー。


南東部/進行リミット:2(残り39)

GM では、〈魔境〉内を移動したので、リミット進行のダイスを振ってください。

 先述した通り、〈魔境〉内では、エリアを移動するごとにリミットが減少します。どれだけリミットが減少するかは、プレイヤーがダイスを1個振って決定します。

アズール (ダイスを振る)減少値は2だな。
フィール それなら〈竜の爪〉で0にする必要はないな。

【竜の爪】
 〈竜脈使い〉は、その身分証明証として必ず〈竜の爪〉という竜の爪を模した武器を持っています。
 これは自身が〈竜脈使い〉である証明証であるとともに、〈魔境〉のリミット進行を抑える能力を持っています。
 具体的には、リミット進行のダイスを振ったプレイヤーの[竜脈]から〔6〕を捨てることにより、リミット進行のダイスの出目を〔0〕に変更できるのです。
 ここではリミット進行の出目が2と低かったので、アズールは〈竜の爪〉の効果を使用しませんでした。

GM では、貴方達は南東のエリアに侵入しました。このエリアには立派な石造りの建物が立っています。どうやら領主の館のようですね。
フィール ふむ。普通であればここに領主様がおられるのだろうが……ともかく、中に入ってみよう。
GM 残念ながら門は強固な樹木や菌糸によって覆われてまして、内部に侵入できそうにありませんね。
アズール ……ちっ、ハズレか?
GM しかも、皆さんが門に近づくと、そこで[法則障害]が発生します。
一同 やっぱりかー!(笑)

【法則障害】
 法則障害とは、〈魔境〉内に存在する物理法則の歪みによって発生する、狂った自然現象の総称です。〈魔境〉内部に踏み入った人類は、例外なくこの法則障害に苦しめられ、内部への侵入を阻まれます。
 ゲーム的に言えば、ダンジョン内に配置されたトラップだと思えばいいでしょう。

GM このエリアで発動する[法則障害]は「胞子の渦」だ。そこら中に生えている毒キノコから、毒性の胞子が吐き出されます。
フィール 胞子の渦……たしかパーティのうち2人が【精神】判定に成功すれば[消去]可能だったよな
GM もちろん、[突破]という選択肢もありますよ。

【消去と突破】
 法則障害への対処方法は、[消去]と[突破]の2つがあり、それぞれ以下の特徴があります。

消去:
・必ずリミットが1d経過する。
・判定が必要。判定に成功した人数が[必要人数]以上であれば消去成功。
・消去に成功した場合、法則障害は無効化され、[素材]と呼ばれるアイテムを入手できる。
・失敗した場合、法則障害の効果が発揮される上に、[素材]は入手できない。

突破:
・[リミット]が経過しない。
・キャラクターは全員[法則障害]の影響を無条件で受ける。
・〈魔境〉のエネルギーを全身にうけた影響で、[竜脈]1個を任意のものに変更できる。
・[素材]は入手できない。

アズール つまり、消去は成否に関わらずリミットが進む上に、障害を受けるリスクもあるということか。
GM その代わり、成功すればメリットは大きいですよ。法則障害を除去した上にアイテムが手に入ります。
フィール 突破は法則障害の効果を受けてしまうが時間が経過しないのと、[竜脈]を操作できるのが最大のメリットだが……まあ今回は消去でいいだろう。
GM 「胞子の渦」の消去難易度は【精神】14、必要人数は2人なので、皆さんのうち2人以上が【精神】判定で14以上を出せば消去成功ですよ。
アズール【(ダイスを振る)【精神】なら余裕だな。
パール あたしはブルーボムを消費して判定成功☆ 爆弾を投げまくって飛んでくるキノコを全て叩き落とします。「きゃー、こないでー!」
フィール ……アズールだけじゃなくてこっちのお子様も高性能かよ……(頭を抱える)。
パール どしたの、おじちゃん?
フィール …………なんでもない。なんでもないんだ(遠くを見ながら)。

 パーティのうち2人が判定に成功したので、一行は法則障害「胞子の渦」の消去に成功し、素材「輝くキノコ」を入手しました。
 また、この消去により、リミットが2進行しました。

GM えー、では[消去]に成功したので素材「輝くキノコ」を入手できます。使用すると【魔D】が上昇する優れもの。菌糸に覆われた壁からデカいのが1本生えてると思いねえ。
フィール それはありがたいな。確保しておこう。
GM ……と、フィールがキノコをもぐとですね。もいだキノコの下から、人間の顔が出てきます。
一同 怖っ!?(笑)
フィール に、人間が埋まってた?
GM ええ。しかもその顔、しゃべります。
フィール 怖いよ!?(笑)
GM 「お、おまえら……〈討伐者〉か?」とくぐもった声でしゃべります。
フィール 「いや、〈竜脈使い〉だが……もしかしてお前、この街の住人か?」
GM 「お、おお。そうだ。そうだとも。私はこの街の研究者だ」とグラングランと頭を振りながらしゃべります。
フィール 怖っ!!
パール 「おじちゃん、この街の人怖いよー!」
GM 「怖いとか言うなよっ! っていうか助けてよっ!?」(一同笑)
フィール わかった、とりあえず助け出してやるから落ち着け(笑)。

 一行は男を菌の壁から引っ張り出してやり、事情を聞き出すことにしました。
その男は、この街は数日前に突如として街中が翡翠色の霧に包まれた、と話します。男は街を脱出しようと〈魔境〉内を歩き回りましたが、そのうちに気が遠くなり、ふと目が覚めると菌類の苗床になっていたそうです。

アズール め、目が覚めると苗床に……。
フィール なんて怖い話だ。
GM 「危うくあのまま菌の栄養分になるところだった。助かったよ。ところで君たちはこの街を助けにきてくれたのかい?」
フィール 「そうだ。我々はこの街を〈魔境〉から解放するためにきた〈竜脈使い〉だ。」
GM 「おお、やはりそうか! 助かるよ!!」
クロウ (さらっと)「いえ、私たちは公爵様を助けに来ただけだけど。」
GM 「ええっ!?」(笑)
フィール いや、まあお前らは確かにそうかもしれんが(苦笑)。
GM 「いやでも、公爵様はここにはいらっしゃらないぞ。〈魔境〉化した当時は研究施設のほうにいらっしゃったはずだ。」
クロウ なんだ、研究施設のほうだったのか。
GM 「あと、他にも大勢生存者がいるはずだ。ただ[魔境臨界]が発生していないところを見ると、普通のエリアに生存者はいないだろう。」と研究者はいいます。
パール どういうこと?

 先述したとおり、〈魔境〉は内部に人間が存在する事を嫌います。そのため、内部に存在する人類の人数が多ければ多いほどリミット進行が早くなり、[魔境臨界]の発生が早くなる、という特性を持っています。〈魔境〉探索を行うのが軍隊ではなく少人数の〈竜脈使い〉でなければならない理由がここにあります。
 逆に言えば、大量の生存者が〈魔境〉内部に存在するにも関わらず[魔境臨界]が発生していないということは、街の生存者は人間が存在してもリミットが進行しない特殊なエリアか、そういう特殊な[法則障害]の発生しているエリアにいる、という推測が成り立ちます。

クロウ なるほど、そういうことね。
GM 当然、〈魔境〉を破壊する前に生存者を発見しても、生存者をそのエリアから外に出すことは出来ません。
フィール 通常の[探索エリア]に生存者を侵入させてしまうと、一気にリミットが進行して[魔境臨界]が発生してしまうわけか。
GM そういうことです。あとその研究者が言うには、〈討伐者〉らしい男達が石化しているのを見た、ということです。
フィール 石化能力を持つクリッターがいる?
GM 「ああ。この街はクリッターを研究していてね。最近もサイクロプスバジリスクを捕獲しているんだ。」
一同 おい。
フィール バジリスク、つったかいま?
アズール よし、ちょっと待てお前(苦笑)。
パール おじちゃん、バジリスクってなにー?
GM 「(なんだか嬉しそうに)ああ見えて結構美味いんだぜ?」
一同 食ったんかい!
GM 「刺身にして醤油をかけると美味いんだ。知らないのか?」
フィール 知らねえよ。っていうか普通食わねえよ!(笑)
GM とまあ、この研究者から得られる情報はそんなところですね。
アズール い、嫌な情報を聞いた。
クロウ とりあえず、一端[侵入エリア]に戻って、研究施設に向かおうよ。
フィール そうだな、そうするとしよう。


[侵入エリア]/進行リミット:2(残り35)

アズール そういやさっき感じた視線を無視していたが、なにか調べた方がよくないか?
フィール おお、そういえばすっかり忘れていたな(笑)。GM、この辺りを今更ながらに調べてみます。
パール すごい今更だ(笑)。
GM 了解です。周囲を調べるとすぐわかるんですが、あなたが視線を感じた方向に向かうと、石の壁に半身が埋まった人間を発見します。
フィール なんだと?
GM その壁に埋まった人間は生きており、苦しそうにあなた達に話しかけてきます。「あ、あんたたち〈竜脈使い〉か!? た、頼む助けてくれ……!」
クロウ 助けてといわれても……。
GM 「頼む。具体的にはグレートエリクサーをくれないか。」
アズール 具体的すぎるわ!(笑)
フィール まあ持ってはいるが(苦笑)。ではエリクサーを使用してやろう。だから知ってることを話してくれ。
GM 「た、助かった……!」
フィール とりあえず詳しい話を聞かせてもらおうか。

 壁に埋まっていた男の話によると、彼らはクリッター捕獲依頼をこなすために街に滞在していた〈討伐者〉だそうです。
数日前にサイクロプスとバジリスクを捕獲してこの街に運び込み、その報酬で祝杯を挙げていたら、その日の夜に〈魔境〉が発生して飲み込まれてしまった、ということのようです。

アズール な、なんて運が悪い。
GM 「で、出口は向こうに見えるデカい門だと言うことはわかったんだが……出口に向かううちに恐ろしいドラゴンに遭遇してしまってな。」
フィール ドラゴンと遭遇した、だと?
GM 「ああ。そのドラゴンは邪眼を持つ恐ろしいドラゴンで、一瞬で石化させられてしまった。」
アズール げげー。
GM ここで[識別]判定を行ってください。[目標値]は11。
フィール (ダイスを振る)成功だ。
GM 成功したなら、「ペトリファイドラゴン」というタイプのドラゴンだということがわかります。要するにバジリスクがドラゴン化した存在ですね。
フィール まんまだな(笑)。強さはどんなもんです?
GM (さらっと)レベル7です。
一同 おいっ!?(笑)
GM 具体的には【命中】18、【回避】18、【発動】11、【抵抗】11。【行動値】29、【生命力】287ですね。
パール むりむりむりむり!(笑)
GM 代表的な能力は《凝視・麻痺》に《猛毒》、さらに三回攻撃してきます。
アズール 勝てるかあああぁっ!?
クロウ ばーかーばーか!(笑)
パール これは、死にたくなかったら遭遇するな、と……。
フィール ……そうか。これは卵運びクエストなんだな。
パール 飛竜に見つからないように卵を持ち帰れ、と(笑)。

 通常、〈魔境〉化した空間はボスであるドラゴンを倒さなければ元に戻りません。しかし、世界干渉LV2のキャラクターが討伐できるドラゴンのレベルは、せいぜい5レベルまで。それを超えるとデータ的に討伐は不可能です。
 しかし、一行も各自の事情で引き返すわけにはいきません。
 一行はドラゴンに遭遇しないように祈りながら、街の探索を再開します。


研究施設/進行リミット:3(残り32)

 一行は助けた街の研究者や〈討伐者〉を従えつつ研究施設エリアへと向かいます。
 そのエリアは巨大な正方形の研究施設が多数立ち並んでいまますが、それらの建造物はまるで鋼のような茨で覆われており、内部に侵入することは不可能に見えます。

クロウ ここも中には入れないのかあ。
アズール とにかく周辺を調べてみよう。
GM 周辺を調べてみるとですね。遠くから「誰? 誰かいるの?」という声が聞こえてきます。
パール 助けを求める声が聞こえるよ、おじちゃん!
フィール それは行かないわけにはいくまい。そちらへ向かうぞ。
GM では貴方たちがそちらへ向かうとですね。より強固に鋼の茨に覆われた研究施設があります。有刺鉄線で建物が頑丈に覆われているような感じなのですが、その茨の奥に人の顔が見えます。
フィール 生存者か!?
GM その声が聞こえたのか、茨の奥から「そこに誰かいますね!? よかった、大丈夫ですか!?」と女性の声が。
フィール 「我々は外からやってきた〈竜脈使い〉だ! 貴女はこの街のものか?」
GM 「〈竜脈使い〉? よかった、あの瓶にいれた手紙が届いたのね……!」
フィール 「おお、あれは貴女が?」
パール ということは、ヒルダさん?
GM 「そうです。私がヒルダです」
アズール ということは……俺の手紙を渡す相手か。
GM そう会話していると、さらに奥の方から「ヒルダさん、どうしたんですか?」「誰かいたんですか?」と複数の人の声が聞こえます。どうやら奥の方に大勢の人間がいるようです。
アズール なるほど。ここに街の住人が捕らわれているのか。
フィール ……ということは、もしかしてここは[異界エリア]か?
GM そうです。ここが[異界エリア]です。

【異界エリア】
 [異界エリア]とは、〈竜鱗〉(とボスのドラゴン)が存在する[最終エリア]への入り口となるエリアのことで、別名〈虚空次元〉ともいいます。
 [異界エリア]では〈竜鱗〉が発する強大な“世界の力”により時空がねじまがっており、このエリアにどれだけの人間がいようと通常のようにリミットが進行することはありません。
 ただし、このエリアは外部との時空のねじれが流動的に起こっており、一定時間以上[異界エリア]に滞在すると、他のエリアとの道が閉ざされてしまい、〈魔境〉内部に閉じ込められてしまいます。

フィール ということは、この先にドラゴンが?
GM そんな話をしていると、ヒルダが「アズール? アズールなの? どうして貴方がここに?」と驚いた声を出します。
アズール 「ルクレツァの遣いで手紙を届けに来た。」
GM 「手紙?」
アズール 茨の隙間から手紙を差し入れる。
GM ヒルダは手紙を受け取ると、すぐに封を切って中身を読み出します。
アズール やれやれ。俺の仕事はこれで完遂か。
GM ヒルダはしばらく黙って手紙を読み……「アズール。貴方はこの手紙の内容についてなにも聞いてないの?」
アズール 「いや? まったくなにも。」
GM すると、ヒルダは慌てた声で言います。「早くここから脱出しないと……ルクレツァが危ないわ!」
一同 えええぇ!?
フィール そっちが危ないのかよ!?
パール それは意外な展開(笑)。
アズール 「ちょっとまってくれヒルダ! それは一体どういうことだ!?」
GM 「……状況を説明するわ。よく聞いて。」

 ヒルダの話によると、ルクレツァは最近フェルメラの近くでワーグナが発見されたという情報を入手したようです。そしてそれをアズールに伝えると一人で仇討ちに走ってしまうと心配したルクレツァは、アズールに黙ってワーグナの調査を開始した、というのです。

アズール なん……だと?
GM 「手紙には『危ないことはしないつもりだけど、もし万が一自分になにかあったらアズールのことを頼む』と書かれているわ。」
フィール ぜ、全力で死にフラグを立ててるじゃねえか。
アズール ……! それは、何も言わずに出口に走り出そうとするぞ。
フィール ちっ! ちょっと待てアズール!
パール そうよお兄ちゃん! 〈魔境〉を出ようにもこの先にいるドラゴンを倒す算段も立ってないじゃない!
アズール く…………!
GM 「そうよアズール。だいたい貴方私を見捨てていく気? あなたそれでも〈竜脈使い〉なの? 見捨てていけるものなら見捨てていってみなさいよちくしょう!」と茨をガンガン叩きながら暴れるヒルダさん。
フィール いや、まずお前が落ち着けよ(一同笑)。
アズール 待て、ヒルダってそういうキャラなのか!(笑)
GM ……いかん。つい勢いでヒルダのキャラがブレてきた。
クロウ マスター、落ち着いて(笑)。
フィール 「ところでヒルダ殿。ドゴール公爵の居場所を知らないか?」
GM 「公爵様なら、この奥にいらっしゃるわ。……身体の半分くらい石化してるけど。」
一同 おーいっ!?(笑)
GM 「まああれも〈魔境〉の呪いだから、〈魔境〉を解放すれば戻るはずよ。」
フィール 早く〈魔境〉をどうにかしないと公爵様の命も危ない、ということか。……しかし、あのドラゴン倒すのは正直無理だぞ(苦笑)。
GM 「ああ、そのドラゴンのことなんだけれど……この〈魔境〉、変なのよ。」
クロウ へん?
GM 「ええ。この〈魔境〉、実はドラゴンが二体いるの。」
アズール なんだと?
クロウ ふつうは、1つの〈魔境〉にドラゴンは一体、だよね?
GM 「ええ。ところがこの〈魔境〉の〈竜鱗〉はひときわ巨大で、その力が2体のドラゴンを作りだしているの。」
フィール なるほど、そういうことか……。
GM 「でも……〈竜鱗〉はあくまで1つだから、表をうろついてるドラゴンじゃなく、〈竜鱗〉を守っているドラゴンを倒せば〈魔境〉を破壊することが出来るはずよ!」
フィール それは良いことをきいた。もう片方が俺たちが倒せるレベルのドラゴンであれば、とりあえず〈魔境〉を壊すことは可能なわけだ。
GM 「そういうことね。」
アズール でもそれ、二分の一の確率で7レベルドラゴンに大当たりってことだろ?
GM 「そういうことね。」
アズール ふざけんなっ!?(一同笑)
フィール なんだよその飛龍と古龍の二頭クエストみたいな状況は(苦笑)。
GM ただこのエリアには「鋼の茨」の[法則障害]が発生しているため、このままでは先のエリアに進むことが出来ません。
フィール この法則障害は消去できないんでしたっけ?
GM そうです。「鋼の茨」はGMが設定した法則障害を2つ消去もしくは突破すると自動的に解除される仕組みになっていて、それ以外の方法では解除できません。
フィール ここが[異界エリア]なら、この先に〈魔境〉の核となるドラゴンがいるはずだが……。
クロウ てことは、結局他の行ってないエリアを回るしかない、ってことかあ。
アズール あと行ってないエリアは3つだろ? 「門」のエリアはどうせ[脱出エリア]だろうから、そこを除くと実質二択じゃねえか。
フィール 判断基準もまるでないことだし、次に行くエリアは勘で選ぶしかないだろう。
クロウ じゃあ、次のエリアに進む?
フィール そうだな。ヒルダたちを解放するにも公爵様を助けるにも、そのもう一つの〈竜鱗〉の破壊に賭けるしかない。
アズール く……。気分的にはすぐにルクレツァを助けに行きたいが……!
フィール そういうわけにもいくまい。急がば回れってやつだ、アズール。
GM 「そうよアズール。だいたい私しかルクレツァの行き先を知らないのよ?」
アズール ……う。そうか。
GM 「そうよ。もちろん助けてくれなきゃ行き先なんか教えないわ。だから今すぐ私を助けなさい。」(一同笑)
アズール おいこらヒルダ!(笑)
パール ヒ、ヒルダが速攻でひどいキャラになってきてる(笑)。
GM 「す、すいません言い過ぎました。いいんですどうせ私、あんまり名前を出す意味もないチョイ役NPCですから。別に助からなくたっていいんです。ええいいんですとも」(一同笑)
アズール 今度は鬱キャラかよ!?
GM い、いかんいかん。ぶっちゃけこいつ「知り合いの魔法士」程度の設定だったからキャラがブレまくりで(笑)。
クロウ 落ち着いてGM(笑)。
GM ええと、まあそれはともかく。ここでもう一つ[イベントリミット]というものが発生します。
アズール [イベントリミット]?
GM 「ええ。上級ルールブック『アルティメット・ドラグーン』で追加されたルールで、〈魔境〉のリミットとは別に設定される、あるイベントが発生するまでのタイムリミットです。もちろん、あなたたちがなにか行動するたびに減少していきます。リミットが0になると、GMが設定したイベントが発生すると思ってください。
フィール ……ええと。それはつまりルクレツァの余命、ということでしょうか。
GM (目をそらしながら)ええと、まあ。なんのことかな。
アズール 目を逸らしたっ!?
GM ちなみに[イベントリミット]は非公開です。
フィール …………よし。できるだけ急ぐか……(笑)。

住宅街/進行リミット:0(残り32)

 いろいろとせっぱ詰まってる事が発覚した一行は、当初の予定通り住宅街へと向かいます。
フィールはこの移動でリミット進行のダイスで4を出しましたが、〈竜の爪〉の効果でこれをキャンセル。[竜脈]にある〔6〕の出目を破棄する代わりに、リミット進行値を0に変更しました。

GM 住宅街は非常に深い樹海と化しており、石化した家畜の死体が散乱しています。
フィール 石化した死体……ドラゴンか。
GM ええ。石化していない部分はまだ暖かく、つい数分前の死骸だということがわかります。
クロウ ついさっきまでドラゴンがここにいた?
フィール そういうことだな……。二体いるドラゴンのうち片方は[最終エリア]にいて、片方はこの〈魔境〉内を徘徊している、ということか。
GM ええ。具体的にはついさっきまでこのエリアにいて、いまは隣のエリアに移動しているようです。
アズール 具体的すぎる(笑)。
フィール つまり、この周辺エリアを周回している……?
GM ではここで[目標値]12の[察知]判定をお願いします。14以上の人はさらに詳しい情報が手に入ります。
パール (ダイスを振る)あ、クリティカル♪
GM なんだと?(笑)
パール さすがスーパー☆エクスプローラーパールちゃんね!
フィール 二つ名がいつのまにか変わってるじゃねえか。
GM えー、スーパー☆エクスプローラーパールちゃんの見立てによるとですね。ここには[法則障害]「迷いの森」が発生しています。[消去]の[目標値]は【精神】13。全員の成功が必要です。
フィール ……じゅ、じゅうさん?

 この判定にアズール、パール、クロウは成功しますが、フィールのみが失敗してしまい、全員が【生命力】に10点のダメージを受けてしまいました。

パール もう「おじちゃん」から「おっちゃん」に格下げね。
フィール し、仕方なかったんだ!
GM フィールの格が1つ下がったその頃(笑)。遠くの方……具体的にはヒルダのいる研究施設の方角から、バリバリという音が聞こえてきます。
アズール む、なんだ?
GM みると、研究施設を取り巻いていた鋼の茨がはがれ落ちていくのが見えますね。具体的に言うと鋼の茨の[法則障害]が解除されました。
フィール 解除の条件を満たした、か。
GM そうです。鋼の茨の解除条件に設定された[法則障害]が最初の「菌糸」とこの「迷いの森」だったわけです。
アズール ということは……研究施設に戻れば[最終エリア]に到達できるようになったのか。ならばいますぐ引き返そう。
GM 「ええ、そうですが……」と君たちについてきている研究者の男がいいます。「例の石化ドラゴン、確実にこの周辺にいますよ?」
アズール ……う。
GM 「具体的には我々が1エリア移動するたびに奴も1エリア移動しているようですぜ」
フィール ……このシナリオのNPCの例はどうしてこう具体的すぎるんだ(一同笑)。
アズール 引き返すとドラゴンと鉢合わせする可能性がある、か……
クロウ でも研究所に戻らないわけにはいかないよね?
フィール 研究施設に戻るルートは二つあるが……どっちに移動すると安全なんだろうな。
パール ドラゴンがどういう移動をしているかによるよね。
アズール ドラゴンが反時計回りに周回しているなら、最短距離を戻ると鉢合わせる。時計回りに周回しているなら、その逆ということか。
フィール (少し考えて)だが、それを推理する材料が我々にない以上、考えていても時間の無駄だろう。ならば最短距離を移動するべきだ。わざわざ遠回りしておいてドラゴンに遭遇するっていうのが最悪のパターンだからな。
GM では、最短距離を通って研究所まで移動する、でよろしいか?
一同 OKです。


研究施設/進行リミット:3(残り29)

 一行は最短距離を移動して研究施設に戻ります。もしここで7レベルドラゴンに遭遇すると全滅の可能性が高いのですが…………幸いドラゴンには遭遇せず、何事もなく研究施設にたどり着きます。

GM では研究施設に何事も無く戻ってきます。
一同 ふ〜……(安堵)。
アズール よし、さっさとヒルダ達を助け出そう。
GM ヒルダは君の姿を見ると「ああよかった、アズール。ついさっきまで建物の前で物凄い足音がしていたのよ!」といいます。
フィール ぎ、ぎりぎりだったか。
GM 建物のなかには多くの人がうずくまっています。皆救出を待って疲れ果てているようです。
フィール 「皆さん、無事ですか? 助けに来ました!」
GM 「おおお!」「〈竜脈使い〉の方が着てくださったぞ!」「助かるのか俺たち!?」とフィールの声を聞いた人々が歓喜の声を上げます。
フィール 「もう大丈夫です。必ず我々が助け出してみせます」
GM 「おお……!」「ありがとうございます、〈竜脈使い〉様!」「〈竜脈使い〉様!」と皆がフィールに駆け寄ってきます。
フィール そ、そうだ。俺は〈竜脈使い〉。かつては神童と呼ばれた男。不可能など無い!(一同笑)
アズール フィールが無駄に持ち上げられてやがる(笑)。
パール どうみても後で落ちるフラグ(笑)。
GM そんな感じで皆さんの周りに大勢の人が集まるとですね。貴方たちの前に、光り輝く[竜魂]が出現します。

【竜魂】
 竜魂とは上級ルール『アルティメット・ドラグーン』で追加された要素で、人類の感情や希望によって形成される特殊なエネルギーのことです。ルビは「ドラゴンソウル」。別名りゅうたま
 人が大勢集まる場所で人に希望を与えたり、人を感動させたりすると獲得できるアイテムで、[竜魂]を1つ消費するとキャラクター1人の[竜脈]1つを任意の出目に変更することが出来ます。
 このゲームの最強アイテムの1つといっても過言ではありません。

フィール [竜魂]か。ありがたい、これでいつでも[竜脈]を1回操作できる。
パール なるほど、そんなのがあるんだ。
アズール これでだいぶ戦術の幅が広がるな。
GM 「助けてくれてありがとう、あなた達。あとはこの先にいるドラゴンさえ倒せば……」
フィール まあそれが一番問題なんだが(苦笑)。
GM 「そうそう。さっき話した巨大な〈竜鱗〉について詳しく説明しておくわ」とヒルダが話をしてくれます。
フィール ふむ、詳しい情報があるなら聞いておきたいな。
GM ヒルダいわくそれはひときわ巨大な〈竜鱗〉で、この〈竜鱗〉ひとつでふたつ分の能力を持っている、ということです。この珍しい〈竜鱗〉は先日捕獲したサイクロプスの体内から出てきたんですが、研究中に魔力が暴走してしまい、その影響で街が〈魔境〉化してしまった、と。幸い研究施設は結界が張られていたため、この施設にいた研究者は無事だったんですが。
アズール 結局その〈竜鱗〉が〈魔境〉化の原因か……。
GM 〈竜鱗〉の力を取り込んだクリッターをドラゴンと呼ぶわけですが、クリッターが〈竜鱗〉を取り込んでからドラゴンに変化するまでには少し時間がかかります。ヒルダは、〈討伐者〉たちは丁度ドラゴンに変化する直前のクリッターを捕獲してしまったんだろうと考えています。
クロウ つくづく運の悪い……(笑)。
GM で、ひとつでふたつ分の能力を持つ特殊な〈竜鱗〉の影響で、二体のクリッターがドラゴン化してしまったということです。
フィール なんつー迷惑な。
GM 「それで、よ。サイクロプスのほうはこの研究施設の奥──具体的には[最終エリア]にいるわ」
フィール まあ、そういうことだろうなあ。……問題はそいつに勝てるかどうかだが。
GM 「大丈夫。この奥のドラゴンはバジリスクほど強くないわ。……具体的には5レベルよ」(一同笑)
フィール そっちは適正レベルだな(笑)。
GM (グッと親指を立てて)「大丈夫! 4レベル以上離れると瞬殺されるけど、3レベル以内なら全然イケるわ!」
アズール だからどうしてそうこのシナリオのNPCは無駄に具体的なんだよ!(一同笑)。
パール こっちのレベルまでバレてる(笑)。
アズール とにかくルクレツァのこともある。急いでそのドラゴンを片付けるぞ。
GM そうですね。今頃はシャルル王子も寂しくお外で待ってますよ。あやとりとかしながら。
クロウ いやそこはどうでもいいから(笑)。
フィール それじゃ、ドラゴンを倒しに行くか。
クロウ その前にキャンプしようよー。
パール そういやみんなダメージ受けてるんだよね。
フィール そうだな。ここで[大休止]をしておこう。

【大休止】
 キャラクターが〈魔境〉内で取ることのできるアクションの1つ。
 [大休止]を行うと、キャラクター全員が以下の効果を受けることができます。

  1)【生命力】が最大値まで回復する。
  2)法則障害などによって発生した不利な効果が全て消滅する。
  3)竜脈2個を任意の出目に変更することができる。

 このように非常に強力な効果を持つ[大休止]ですが、代償として『リミットが3d進行する』ため、通常はおいそれと[大休止]を行えません。
 しかしすでに[最終エリア]目前まで到達している一行に取って、リミット3d経過は痛くないのです。

フィール うふふふ。これで俺の[竜脈]は〔1・1・1・2〕だぜ。
GM み、見てると不安になる[竜脈]ですね(笑)。
フィール 1と2が必要なんですよ……(笑)
クロウ 私は〔6・6・6・6〕になったわ。
GM げっげぇー!(笑)
アズール その6をよこせー(笑)
フィール こ、これがリアルラックの差か……!
GM まあ剣の王は6いっぱい使いますからね。
クロウ それじゃあ、みんな準備はいい?
GM 「あ、まって。まだ話しておかないといけないことがあるわ」
フィール うん? まだなにかあるのか。
GM 「ええ。実はそのサイクロプスがいる部屋っていうのは、発見されたアーレス人が入った箱がある部屋でもあるのよ」
フィール ……なんだと?
GM 「そのサイクロプスのドラゴンは、どういうわけかそのアーレス人が入った箱の近くから離れないのよ」
アズール ほう?
フィール なにか目的があってその部屋にいる、ということか。
GM 「私はそのアーレス人の研究が主な任務だったんだけれど。発掘された“箱”の中で、そのアーレス人は生きていたわ」
フィール 生きている、だと?
GM 「ええ。その箱はとても古いものだったけれど、箱の中で確実に生きていたわ。私としては研究対象として非常に興味深いのだけれど……〈神聖教会〉がうるさいから、あまり詳しい調査はできていないのよ」
クロウ なるほど。
GM 「もしあのアーレス人になにかあったら、〈神聖教会〉との関係の悪化は免れないわ。それだけは避けたいのよ。だから、できるだけ無事にアーレス人を助け出してちょうだい」
フィール ……まあ、できるだけのことはしてみるが(苦笑)。
GM ちなみに、ここでサイクロプスの特徴を聞くことにより[識別]判定が可能になります。[目標値]は12。
アズール (ダイスを振る)余裕だ。
GM ではデータを公開します。

名称:シングルアイドラゴン
レベル:5 サイズ:4 知能:狡猾 弱点:閃光
移動:歩行 行動値:22 生命力:264 
装甲:13 結界:
命中:16 回避:14 発動:12 抵抗:15 その他:11
タレント:《凝視・暗闇》《全力攻撃V》《ブレスT》《武器耐性・槌》

アズール 装甲13に抵抗15!?
フィール 確認するが中にいるのはドラゴンだけか?
GM 「ドラゴンだけよ。雑魚はいないわ」
フィール それはちょっと意外だったな。
パール おじちゃん、そんなに強い敵と戦いたかったら外に行けばペトリファイドラゴンがいるよ?
フィール 無理いうなっ!?
GM ……ちなみに、製作者サイドがガチで2レベルPCを作っても、7レベルドラゴン相手には勝率2割だそうです(一同笑)。
パール ほら、5回に1回は勝てるってさ☆
GM 結論としてはは「一戦闘に最低三回はクリティカルしないと無理」でした。
フィール 勝てるかぼけええぇ!(笑)




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